2015年5月29日金曜日

ドビュッシー : ヒースの茂る丘 - 前奏曲集第2集より Claude Debussy : Bruyères, Préludes Deuxième Livre

ドビュッシーは、前奏曲集 第1集(12曲)と第2集(12曲)を作曲しました。特徴的なのは、各曲の題名を楽譜の最初に掲げるのではなく、ひっそりと曲の最後に置いていることです。これは、演奏者や聴衆に固定されたイメージではなく、自由なイメージをさせる意図があるといわれています。
「ヒースの茂る丘」は、前奏曲集 第2集の5番目に置かれています。フランス語の題名は「Bruyères」=ヒース(複数形)です。
ヒースはスコットランド地方にたくさん生息する、とても小さな花を咲かせる植物で、エリカとも呼ばれます。見渡す限りのヒースが茂っている丘は、エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」の情景を彷彿とさせます。
ヒースが生息するところは、作物が育ちにくい土地だそうです。
「ヒースの茂る丘」は演奏時間3分未満ながら、色彩豊かなドビュッシーの音楽の美しさ、繊細な和音構成が充分に堪能できる曲です。


上の動画から、平田尚子演奏の「ヒースの茂る丘」の色彩感あふれる演奏をご堪能いただけます。ビデオの中で、ヒースの花の映像もご覧になれます。

2015年5月20日水曜日

リュリ:町人貴族 Lully:Le Bourgeois Gentilhomme

リュリはイタリアで生まれ、少年の頃フランスに渡り、ルイ14世の音楽家として活躍しました。モリエールと合作でコメディ・バレエ「町人貴族」を生み出し、大ヒットしました。現在でも毎年さまざまな劇場で上演されている演劇の重要なレパートリーの一つです。コメディ・バレエという分野は単なる喜劇にとどまらず、演劇、舞踊、音楽(楽団と歌)の要素がそれぞれに重要な役割を持っています。
「町人貴族」は、大金持ちのブルジョワのムッシュー・ジュルダンが貴族になりたいという願望を持ったものの、貴族の教育を受けていないので、教養や作法を学ぶことを決意、音楽、ダンス、武術、哲学の教師が訪れる。あまりの無知と教養のなさをさらけ出すムッシュー・ジュルダン。貴族ではないことを理由に、ジュルダンの娘との結婚を許されなかったクレオントは、トルコの王子になりすまし、自分とジュルダンの娘との結婚を認めればトルコの貴族の称号「ママムシ」を与えると提案する。喜び受け入れるジュルダン。トルコのセレモニーのための行進曲と題された曲は単独でも演奏される機会のある曲。リュリらしいはっきりとしたリズムと威厳のある管弦楽法が特徴的。

トルコのセレモニーの為の行進曲


 
「町人貴族」全体の動画はこちら(フランス語とイタリア語の字幕)
この版は、ベンジャマン・ラザールによって、当時の発音の仕方や音楽の演奏の仕方などを研究した上で上演された完全復刻版。個人的には最も素晴らしいバージョンだと思います。



プーランク:15の即興より第13番 Poulenc: Improvisation No.13

フランシス・プーランク(1899-1963)はフランス・パリ生まれの作曲家、ピアニスト。独特の和声語法、アイロニー、サルカスム、ノスタルジーの美しい曲を多くのこしている。卓越したピアニストでもあったので、高度はピアノの演奏技術を求める曲も多い。プーランクの父親は、製薬会社の創業者のひとりで、のちに大化学・製薬会社に発展した。(現在は閉業) プーランクは当時の上流社会に出入りし、プロコフィエフをフランスの聴衆に紹介するなどもした。
プーランクはピアノの弟子をただ一人だけとった。その唯一の弟子がガブリエル・タッキーノGabriel Tacchinoである(ちなみに我が師である)。タッキーノはプーランク唯一の直弟子として、プーランクの教えや楽譜には書かれていないプーランクの自作を演奏する上での要求を伝える貴重な存在である。現在タッキーノはパリ・スコラ・カントルムSchola Cantorum音楽院で教鞭をとっている。

15の即興第13番はノスタルジックな作品。大げさな表情をつけた演奏はふさわしくない。あくまで自然に。
プーランク:15の即興 第13番
youtubeでタッキーノの演奏が聴けます。

ルイ・クープラン:ムッシュー・ド・ブランクロシェールの墓に Louis Couperin:Tombeau de Monsieur de Blancrocher

ルイ・クープラン(1626-1661)にフランスで生まれ、今日「クープラン」として一般的に知られているフランソワ・クープランのおじにあたります。
ルイ・クープランは「プレリュード・ノン・ムジュレ」という小節線の無い(!)チェンバロ曲を数多く残しており、今日のチェンバロ奏者たちからは高く評価されている。
「ムッシュー・ド・ブランクロシェールの墓に」は、当時高名なリュート奏者であったブランクロシェールへの追悼の曲で、ブランクロシェールは、階段から落ちて亡くなったが、この曲のなかでは彼が、階段を転がりながら落ちていく様が音によって描写されている。

ムッシュー・ド・ブランクロシェールの墓に -動画

上のリンクをクリックすると、youtubeで巨匠グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)の演奏が聴けます。

フォーレ:パヴァンヌ Fauré: Pavane Op.50

パヴァンヌ 作品50はフランス人作曲家、ガブリエル・フォーレ(1845-1924)によって1887年に作曲されました。オーケストラ用の作品として書かれましたが、合唱付きの版、ピアノと合唱版、ピアノソロ版もあります。
パヴァンヌとは、元来16世紀のゆっくりとしたテンポの宮廷舞踊で、16世紀が幕を閉じるとともに踊られなくなりましたが、音楽様式としてのパヴァンヌは17世紀半ばまで保たれ、ウイリアム・バードなどの作曲家が、チェンバロまたはヴァージナルのためにたくさんのパヴァンヌを作曲しました。フランス近代(19世紀後半から20世紀初頭にかけて)は、バロックや古典の舞踊音楽の様式からインスピレーションを得て作曲された名曲がありますが、これは当時としては斬新なことでした。直前の19世紀の音楽様式と大きく異なります。代表的な例は、ラヴェル:クープランの墓、古風なメヌエット、 ドビュッシー:ベルガマスク組曲、ピアノの為に、などです。 フォーレのパヴァンヌもこうした古い過ぎ去った時代への憧憬が現れています。

フォーレ:パヴァンヌ

フランス音楽のブログ

フランス音楽。素敵でお洒落なイメージはあるけれど、何を聞いたらいいかしら。基本的なドビュッシーの月の光やエチュードは弾いたけど、隠れた名曲を開拓したい・・。そんなあなたに贈る、知られざるフランス音楽の名曲の数々を、パリ在住のピアニストがお届けします。